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コロナウイルスで自宅待機中にお勧めの本『生物と無生物のあいだ』





2020年3月29日現在、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威をふるっています。

欧州に続いて米国でも感染者数が急増しており、外出や集会禁止令が出るなど人々の生活に大きな影響が出ています。

日本国内でも爆発的な感染者増加の瀬戸際であるとされ、首都圏や大阪などで週末の外出を自粛するよう要請がでています。

 

外出を控えたとき、自宅でなにをして過ごすかは人それぞれですが、読書好きならぜひお勧めしたいのが『生物と無生物のあいだ』です。

本書では分子生物学者である著者の経験も踏まえながら、歴史上の有名な生物学者の研究内容や考えを参照しつつ、生命の定義について考察しています。

コロナウイルス感染防止に役立つ具体的な情報が得られるわけではありませんが、人類を恐怖におとしいれるウイルスという病原体の正体について想いを馳せるのも一興かと思います。

※以下の紹介文はネタバレを含みますのでご了承ください。

 

 

生命とはなにか?

筆者は『生命とは動的平衡にある流れである』と定義しています。

もう少し平たくいうと『新陳代謝(しんちんたいしゃ)』しているのが生命体ということです。

私たちは毎日食事をして体外から栄養を摂取します。食物は体内で分解されて細胞内に取り込まれるのと同時に、古い物質は排出されます。

この新しいものが古いものに置き換わるのが新陳代謝です。

手足の爪や髪の毛のように、見た目で変化がわかるものは『入れ替わっている』と想像しやすいです。

しかしそれだけではなく、骨のように大人になってからは変化しにくそうな部位も、新陳代謝によって中身の物質は常に入れ替わり続けています。

(本書には記載がありませんでしたが気になったので調べたところ、3~5年くらいで体中のすべての骨が新しい骨に入れ替わるそうです。)

いまキーボードを打っているこの指も、中身の分子は徐々に入れ替わって地球に帰っていってると想像すると、ちょっと不思議な気分になります。

 

つまり生命とは、新しい物質と古い物質が常に入れ替わりながら、ある一定の秩序を保った状態を維持しているものであるといえます。

 

ウイルスは生物か?

コロナウイルスも含めウイルスはタンパク質の殻のなかに遺伝子(DNAやRNA)を内包しただけの物質です。ウイルスが体内に入ると、体内の細胞中に自らの遺伝子を放出し、細胞内で増殖します。

ウイルスは増殖(自己複製)できますが、それはあくまで生きた細胞(宿主細胞)に寄生することで可能となるのもであり、ウイルス自体はなんの代謝もできません。

前項の新陳代謝しているのが生物であるという定義に照らしあわせると、ウイルスは生命体とはいえません。

 

分子生物学の黎明期を彩った偉人たちの逸話

歴史上の生物学者たちの赤裸々な人間模様が語られているもの、本書の大きな魅力です。

『生命とはなにか』という学術的な問いにあまり興味がない方でも、生命科学の進歩の裏側にある人間ドラマは楽しめるのではないかと思います。

詳細は実際に読んでいただけたらと思いますが、ここではトピックス的に羅列しておきます。

・日本とあまりにかけ離れた米国での野口英世*1の評価とは。

・DNAの2重らせん構造を発見したワトソンとクリック。その名誉の影に埋もれた本当の立役者とは。

・ドライブデートの最中にPCR法*2をひらめいたキャリー・マリス。

 

*1:明治時代に活躍した細胞学者。2004年から千円札の肖像となっている。

*2:特定の遺伝子を短時間で増殖させる方法。現在ではウイルス感染症の判定に世界中で使用されている。